フレンチ・コネクション
「フレンチ・コネクション」
(The French Connection)
1971年アメリカ
[監督]
ウィリアム・フリードキン
[音楽]
ドン・エリス
[出演]
ジーン・ハックマン
ロイ・シャイダー
[アカデミー賞]
第44回アカデミー賞5部門受賞
作品賞、監督賞、主演男優賞、脚色賞、編集賞
【introduction】
ニューヨーク市警麻薬課の刑事“ポパイ”ことジミー・ドイル(ジーン・ハックマン)と相棒の“クラウディ”バディ・ルソー(ロイ・シャイダー)は薬物の売人を逮捕したある夜、ナイトクラブ「コパカバーナ」に飲みに出かけるが、そこでマフィアの顔役たちがテーブルを囲み談笑しているのを目撃する。その中にいた2人の若い夫婦を不審に思ったポパイとルソーは店を出た夫婦を尾行し、捜査を開始する。執拗な捜査の先に浮かび上がってきたのはフランスとアメリカを結ぶヘロインの密輸ルート「フレンチ・コネクション」の存在であった。1960年代に起きた実在の事件をモデルにしたクライム・アクション。
【impression】
第44回アカデミー賞で8部門ノミネート、作品賞を始めとする5部門受賞を果たしたクライム・アクションの歴史的名作。ハンドカメラを使い登場人物を追いかけ回すように撮影するドキュメンタリータッチの手法で臨場感ある演出を存分に楽しませてくれます。上映時間104分の中の多くが尾行、追跡のシーンで大胆かつ巧みなカメラワークが生き生きとしています。ポパイ(ジーン・ハックマン)は執念でルソー(ロイ・シャイダー)達と共に悪人を追い詰めていく。
ポパイは正義の存在とは言い難く、黒人を殴って蹴りつけることは当たり前の有色人種を見下す人物として描かれています。印象に残るのは警察署内のルソーとの会話でポパイは「Never trust a nigger」と差別満載の発言をします。これはポパイのモデルとなった実在の麻薬課の刑事エドワード・イーガン本人が黒人を差別的な目で見る人物だったからです。それとは対照的にイーガンを演じたジーン・ハックマンは人格者でありリベラルな思想の持ち主でした。「俺は例え演技でも黒人を殴ったりはできない!」と思い悩んだそうな。そんなジーン・ハックマンに対し監督のウィリアム・フリードキンは事あるごとにダメ出しをして罵倒し続けたといいます。追い込まれながらも葛藤を乗り越えて役者魂をスクリーンいっぱいにぶつけたジーン・ハックマンは見事アカデミー賞主演男優賞を勝ち取るのです。
そして、この映画の最大の見せ場は列車を車で追う後半のカーチェイス。見事なカースタントは然る事乍ら、このアクションシーンを際立たせているのはBGMがないというところ。アクセル全開の唸るエンジン音と、何としてでも悪人を仕留めようと躍起になるポパイの心理状況が最高のアクションを見せてくれます。この映画は音楽の差し込み方が絶妙で、ここぞ!というところで映像を彩るように音楽が姿を現します。トランペット奏者ドン・エリスの不協和音を取り入れたサウンドトラックはこの映画を名作へと導いた影の立役者と言えます。
アカデミー賞5部門受賞という快挙を達成した監督ウィリアム・フリードキンの勢いはここで終わりません。2年後の1973年、もはや伝説とも言うべきホラーの金字塔「エクソシスト」を世に放つのです。今観ても鳥肌が立つほどの戦慄を脳裏に焼き付ける最恐(最強)のホラー映画を作り上げてしまう確かな技術と感性を「フレンチ・コネクション」から感じ取ることができます。5つものオスカーを手にしたのも納得!
あと、余談ですが序盤のナイトクラブ「コパカバーナ」のシーンで歌っているのはブレイク前のザ・スリー・ディグリーズです。年齢が60代くらいの方は観た時にピン!と来たのでは??
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